<コラム>小林製薬の法的責任について

 先日、当事務所に小林製薬が製造・販売した機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した後に、腎疾患を発症した方が法律相談にお越しになりました。

 以下では、当事務所の弁護士が、ご相談者様に実際に説明した内容やアドバイス、具体的には、小林製薬の民事上の法的責任、損害賠償の範囲、今後の見通し、被害者の方がいま準備・対応しておくべきことなどを解説します。

 なお、このコラムは、令和6年4月8日時点の報道などを元に作成しておりますので、最新の情報は各自でご確認ください。

 また、当コラムには当事務所の弁護士の私見も含まれておりますので、あくまでも参考としてご覧いただくにとどめ、個別のご相談などについては小林製薬や行政庁、弁護士などにお願いいたします。

1 ご相談の概要(※ご本人の特定に至らぬよう、概要にとどめています)

 小林製薬が製造・販売した機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を数か月間摂取したところ、倦怠感、尿の泡立ちなどの体調不良を認識したため、病院を受診し検査したところ、医師から腎機能の異常を指摘され、治療が必要となりました。小林製薬にはこれらの経過を報告しましたが、具体的な補償の話などはないため、心配になり法律相談にまいりました。

2 問題となりうる小林製薬の民事上の法的責任

 現在、小林製薬が製造・販売した紅麹関連製品による健康被害にかかる原因などは調査中であり、小林製薬の民事上の法的責任について断定的なことをいえる段階にはありませんが、仮に同製品が原因で健康被害が発生したと判明した場合は、小林製薬は製造物責任法(以下、「法」といいます。)に基づいて被害者に賠償責任を負う可能性があります。

 この法は、被害者が製造物の欠陥によって生命、身体または財産に損害を被った場合に、製造者等に対して損害賠償請求ができることを定めた法律です。民法上の不法行為責任(民法709条)の特則であり、製造者等に過失がなくとも賠償責任を負うことがあります。

 同法に基づいて賠償請求するためには、次の3点を満たす必要があります。

  • 「製造業者等」であること(法2条3項)

小林製薬は紅麹関連製品の「製造業者」であるため、この要件を満たすと考えられます。

  • 製造物に「欠陥」があること(法2条2項)

「欠陥」とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」とされています。

  • 欠陥と損害との間の「因果関係があること」(法3条)

紅麹関連製品に「欠陥」があり、その「欠陥」によって健康被害が生じたという関係にあることが必要です。

 ただし、上記3点を満たした場合であっても、製造業者等において、「製造物を引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、欠陥を認識することができなかった」と証明した場合には、製造物責任が免責され、賠償責任を負わない場合があります(開発危険の抗弁:法4条1号)。

3 損害賠償の範囲

 欠陥と損害との間に相当因果関係、平たく言えば「その欠陥がなければこのような損害は発生しなかった」といえる関係にあれば、その範囲で損害賠償請求ができます。

 具体的には、財産的損害と非財産的損害の2つがあり、前者には、例えば治療費(入通院費用)、通院交通費、葬儀費用、休業損害、逸失利益などがあり、後者は慰謝料です。

 なお、治療費等の実費以外の慰謝料等の具体的な金額がどのくらいになるかは、自動車事故の損害賠償の算定基準を定めた「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)が参考になります。

4 今後の見通し

 報道によれば、「大阪市が本件に関する対策本部を立ち上げ、食品衛生監視員などからなる専属の調査チームを設け、小林製薬や国などと連携しながら原因究明などに取り組む」とされており、行政も関与した形で原因や発生機序などが明らかにされると思われます。

 そして、現時点においては、法にいう「欠陥」があったか、及びその「欠陥」によって健康被害が発生したのかは分かっていませんが、調査結果のなかでそれらも明らかになると考えられ、被害者救済の道が開かれることになると思われます。

 いずれにしても、甚大な健康被害が発生していることから、早期の原因究明や被害者救済が望まれます。

5 被害者の方がいま準備・対応しておくべきこと

 上記のとおり、現時点においては、法にいう「欠陥」があったか、及びその「欠陥」によって健康被害が発生したのかがはっきりしていないため、仮に被害者の方が小林製薬に対して、法に基づいて賠償請求をしたとしても、現段階では請求の要件を満たしているかが分からないため、小林製薬が請求に応じることはないと考えられます(「欠陥」の存在や「因果関係があること」がはっきりした段階で、個別の被害状況に応じた賠償が開始されると思われます)。

 行政を含めた調査により「欠陥」の存在や「因果関係があること」がはっきりすれば、本来は被害者側で立証すべきこれらの事項の立証は不要になると考えられます。

 そのため、被害者側で立証すべきことは、次の2点で足りると考えられます。

①紅麹関連製品を購入・摂取したこと

②健康被害が発生したこと

 そこで、被害者の方がいま準備・対応しておくべきことは、まず小林製薬の対応窓口に健康被害が発生したことを連絡・申告したうえで、上記①②を立証するために、次のような書類やデータを保管・準備することと考えられます。

 ①については、商品現物や包装、購入を裏付けるレシートやキャッシュレス決裁の履歴、ネット通販の購入履歴、納品書・領収証等を大切に保管しておくこと。

 ②については、入通院が分かるレセプト、診療報酬明細書、診断書などを保管・準備しておくとよいでしょう。なお、診断書を医師に記載いただく場合には、紅麹関連製品を購入・摂取した事実・経緯や、その後に健康被害が発生したことを申告し、その旨を明記いただくようお願いするとよいでしょう。

 以上、当事務所の弁護士が、ご相談者様に実際に説明した内容やアドバイスを中心に解説しました。同様の被害に遭われた方の参考に少しでもなれば幸いです。

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