遺産分割協議書でトラブルを回避!

被相続人(相続される方)が亡くなって相続が開始された場合、遺産分割協議書を作成した方がよいケースが多くあります。その理由は、遺産分割協議書は、相続人全員の同意に基づいて作成されるため、後日のトラブルを防ぎ円滑・円満な遺産分割を実現するために必要だからです。

しかし、いざ遺産分割協議書を作成するにしても、どのように作成すればよいのか、その書き方や内容にルールはあるのか、などのご質問をいただいております。また、相続人間の折り合いが悪く、遺産分割協議がうまくいかないというご相談もよくありあます。

以下では、そもそも遺産分割とはなにかや、どのような進め方をすればよいのか、遺産分割協議書の必要なケースや重要性、具体的な書き方や作成のポイント、弁護士に依頼するメリットや弁護士費用などを解説していきます。

遺産分割とは

遺産分割について

被相続人(相続される方)が亡くなって相続が開始された場合、遺言書があれば原則それに従って相続が行われますが、遺言書がない場合は、一旦相続人全員が遺産を共有します。遺産分割とは、相続人全員の共有関係を解消させて、各相続人に個々の財産を取得させる手続きをいいます。

そのために必要な手続きが「遺産分割協議」といわれるものであり、相続人全員が合意すれば「遺産分割協議書」を作成し、それに基づいて不動産や預金などを個々の相続人が取得できるようになるのです。

遺産分割の手続きの概要

遺言書に、例えば、「〇〇銀行の預金は長男〇〇に取得させる」のように、遺産の分割方法が指定されていれば、それに従って分割手続きを行います。

そのような指定がない場合は、相続人全員で協議して、誰が、どの財産を、どれくらい取得するかなど、遺産分割の方法を決めて、全員の合意によって遺産分割協議書を作成します。

もし、相続人全員で協議ができない、または意見が対立して協議が整わないような場合は、相続人の誰かが家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所の中立的な手続きのもとに協議が行われて、合意に至れば調停調書という書面が作成され、それに基づいて遺産分割が行われることとなります。

調停でも合意に至らない場合は、そのまま審判という手続きに移行します。審判は、調停と異なって協議の場ではなく、裁判所の職権で遺産分割の方法が決定され、相続人全員がその内容に従って遺産分割が行われることとなります。

なお、裁判所での調停等は、一般的におおよそ1か月に1度程度しか行われないため、最終的に解決するまでに半年~1年程度かかることも少なくありません。

遺産分割協議書の重要性

相続人全員で遺産分割協議を行って合意が成立した場合であっても、法律上は必ず遺産分割協議書を作成しなさい、とはなっていません。ですので、口頭だけでの合意も有効です。

しかし、口約束だけで遺産分割協議書を作成していない場合、後になってから「いや、合意していない」、「言った、言わない」という争いになる可能性があります。また、口約束が成立していたことを証明することは困難です。

こうしたトラブルを避けるためにも、協議して合意したことの証拠となる遺産分割協議書を必ずつくるようにしましょう。実際、遺産の額や種類がそれほど多くないために、遺産分割協議書を作成しないケースも見受けられますが、相談事例の中にはそのために後日もめてトラブルになったというケースもありますので、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

トラブルの防止:明確かつ公平な遺産分割を実現

遺産分割協議書は、後で「言った、言わない」といったトラブルを回避できるだけではなく、明確かつ公平に遺産分割するという役割も果たします。

遺産分割協議書の一般的な書き方においては、誰が、どの財産を、どのくらい取得するかを明記します。

その際、例えば、不動産であればどのくらいの価値があるのか、預金であれば残高はどれだけあるのかなど、遺産の存在と評価を明確にしたうえで、分割することができますので、公平な遺産分割が期待できます。そうすれば、各相続人の納得感もあるため、後日遺産分割のやり直しなどのトラブルを回避することもできるのです。

法定相続人の確定や名義変更等の円滑化

遺産分割協議書には、法定相続人の確定という意味合いもあります。

例えば、夫婦と子供2人の4人家族で、夫が亡くなったという場合は、特別な事情がない限り、その妻と子供2人が相続人となり、一般の方でも比較的容易に相続人を確定することが可能です。

しかし、例えば、独身で子供や父母もいない方が亡くなり、その兄弟姉妹が相続人となるようなケースで、兄弟姉妹のうちにすでに亡くなっている方がいたり、遺産は要らないとして相続放棄した方がいるような場合は、相続関係が複雑となり、相続人を確定することが難しいケースもあります。

また、普段疎遠な関係であったりすると、遺産分割に参加してもらうこと自体が難しいようなこともあります。また、預金などの相続財産の名義変更を行う際には、遺産分割協議書が必要とされることが多く、戸籍謄本などの書類と併せて提出することで、名義変更手続きがスムーズに進みます。

特に、不動産や預貯金、金融商品など、さまざまな財産への名義変更を行う場合には、遺産分割協議書があれば円滑に手続きを進めることができます。

遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書が必要になるのは、次のようなケースです。

まず、遺言書が存在しない場合、法定相続人間で遺産分割方法を決定しますが、後々のトラブルを防ぐためにも遺産分割協議書を作成すべきです。

また、遺言書があっても、相続人全員の協議で遺産分割をすることもできますが、遺言書と異なる遺産分割をするのであれば、後日のトラブルを回避するために、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

さらに、相続人が多数いる場合や、相続財産が多岐に渡ったり、複雑な場合にも遺産分割協議書の作成が求められます。

遺言書がない場合

遺言書が存在しない場合、相続人間で公平かつ円滑に遺産分割を実施するために、 遺産分割協議書を作成すべきです。また、遺産分割協議書は、相続人が全員合意したうえで、その分割方法を明確にして作成されるものですので、後々のトラブルを防ぐことができます。

なお、遺言書は被相続人の自宅で保管されている場合だけではなく、公証役場や法務局に保管されている場合もありますので、自宅にない場合は、これらの役所に確認しましょう。

公証役場には、公正証書遺言の原本が保管されていますので、公証役場にある遺言検索システムで検索してもらえば、全国の公証役場にある遺言をすべて検索可能です。

また、法務局では、「遺言書保管制度」に基づいて遺言書保管所という所で、自筆証書遺言を預かってくれます。相続人であれば、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず、全国どこの法務局でもデータ検索して遺言書の有無と閲覧ができますので、法務局に確認することも必要です。

遺言書はあるが、相続人全員の協議で遺産分割する場合

遺言書があっても、被相続人が遺言書で遺産分割を禁じていないような場合は、相続人全員の協議で遺産分割をすることもできます。遺言書と異なる内容で遺産分割をすることも可能ですし、遺言書の内容を尊重するものの、遺言書の内容が曖昧な場合にそれを明確化して遺産分割協議書に残すということもあります。

いずれの場合も、遺言書と異なる遺産分割をするのであれば、後日のトラブルを回避するために、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

相続人が多数いる場合や、相続財産が多岐に渡ったり、複雑な場合

相続人が多数いる場合は、後日紛争化する可能性がありますので、各相続人の相続分を明確にして、遺産分割協議書を作成すべきです。

相続財産が多岐に渡たっていたり、複雑な場合も同様に、後日紛争化する可能性がありますので、遺産分割協議書を作成すべきです。

遺産分割協議書作成のポイント、書き方と注意点

遺産分割協議書を作成する際のポイントは、まず財産を特定して正確かつ詳細に記載し、その分割方法を明確に記載することです。

注意点としては、遺産分割協議書には、相続人全員の同意を証明するために、全員の署名・実印を押印し、全員が各自保管することが重要です。

財産の特定と分割方法の明確な記載

遺産分割協議書には、財産を特定してその詳細を記載するとともに、その分割方法を明確に記載することが重要です。

具体的には、不動産や預貯金、株式などの財産を特定して、金融機関名、口座番号などももれなくを明記します。また、分割方法も具体的に記載し、それぞれの相続人が受け取る割合や金額をはっきりさせます。これにより、トラブルを未然に防ぎ、円滑な遺産分割が可能となります。

相続人全員の署名と実印押印

遺産分割協議書には、相続人全員の署名・実印の押印が必要です。これは、遺産分割協議書が法的な効力を持つため、全員が同意していることを法務局や金融機関などの関係先に示す証拠となるからです。

また、これらの関係先に遺産分割協議書を提出して登記変更や預貯金の引き出しなどをする際には、印鑑登録証明書を添付することが求められますので、予め全員分用意しておきましょう。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書の書き方については、縦書きでも横書きでも問題ありません。作成方法も、手書きでもパソコンでも問題ありません。

法律上、書式自体に決まりはありませんが、書くべき内容はおおよそ決まっていますので、以下書き方や書くべき内容のポイントを見ていきましょう。

ポイント

  1. それぞれの相続財産を正確に記載して、特定すること

    例えば、不動産であれば、所在地や面積など、登記簿の通りに記載します。また、預貯金であれば、通帳などを参照して、銀行名・支店名・預金の種類・口座番号などを正確に記載します。

  2. 誰が、どの財産を、どのくらい取得するのかを明記すること

    不動産や預貯金について、「誰が、どの財産を、どのくらい取得するのか」を、誰が見てもわかるように明確に示します。

    例えば、「預貯金1 銀行名・支店名・預金の種類・口座番号は、長男〇〇が全て取得する」などと書きます。

  3. 法定相続人全員が自筆で署名、実印を押印

    最後に遺産分割協議書に相続人全員が同意していることを証明するため、直筆の署名と実印を押印します(銀行などに提出することを想定して、相続人の印鑑登録証明書も用意しておくとスムーズです)。

  4. 法定相続人全員分を作成して、相続人が各自で保管

    後日の紛争を避けるためにも、法定相続人全員分を作成して、相続人が各自で保管します。

遺産分割協議書の効力

遺産分割協議書が作成されると、相続が発生した日にさかのぼって効力が生じ、相続人は、遺産分割協議書に基づいて遺産を分割することになります。

遺産分割協議書に相続人全員の署名と押印があれば、相続人全員が同意しているととみなされますので、例えば、不動産の相続登記であればその提出先の法務局、預貯金の解約手続きであれば銀行などの金融機関で有効な書面として取り扱われます。

なお、後日の争いを極力避けるために、遺産分割協議書を公証役場で公正証書として作成することも有効な手段といえます。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に遺産分割協議書作成を依頼するメリットは、相続全般に関する専門的な知識と経験を持つ弁護士が、相続人間の利害関係などを考慮しながら、公平かつ適切な法的アドバイスやサポートができることにあります。

また、トラブルや疑義が生じた場合であっても、弁護士は交渉力や解決能力に長けていますので、適切に対応して問題解決に導くことが可能です。

弁護士費用

当事務所の弁護士にご依頼いただいた場合の弁護士費用は、次のとおりです。

法律相談

個人・個人事業主のお客様 30分ごとに5,500円(税込)

※1 ご相談の案件の対応をご依頼いただいた場合は、お支払いいただいた法律相談料を着手金に充当しますので、ご相談料は「実質無料」となります。

着手金・報酬金

ご依頼内容 弁護士費用(税込)
着手金 報酬金
遺産分割協議書の作成
(相続人間に争いがなく、合意が成立している場合)
220,000円
遺産分割協議及び協議書の作成
(相続人間に争いがある場合)
330,000円※1 遺産分割により獲得した遺産額
(時価額)を基準に計算した額※2

※1 調停となった場合は別途110,000円、調停後審判となった場合は別途110,000円がそれぞれ加算されます。

※2 遺産分割の報酬額は、次のとおりです。

獲得した遺産額 報酬金(税込)
300万円以下の場合  獲得した遺産額の17.6%
(但し、最低報酬金を33万円とします)
300万円を超え3000万円以下の場合 獲得した遺産額の11%+198,000円
3000万円を超え3億円以下の場合 獲得した遺産額の6.6%+1,518,000円
3億円を超える場合        獲得した遺産額の4.4%+8,118,000円

日当

1 交渉・調停・訴訟案件(23区内に限る)

弁護士が交渉に赴いた場合、または調停・訴訟で出頭した場合、3回までは無料です(着手金に含まれています)。4回目からは、1回につき33,000円の費用が発生します。

2 その他

その他、弁護士が遠隔地に出張する場合、次の日当をお支払いいただきます。

区分 日当の額(税込)
半日(往復2時間超、4時間以内) 3.3万円~5.5万円
1日(往復4時間超) 5.5万円~11万円

実費

弁護士が交渉・調停・訴訟等で外出する場合の交通費、印紙・切手代、戸籍謄本・住民票・登記簿謄本などの取得費用等の実際に必要となった経費をご負担いただきます。

まとめ:遺産分割協議書で円満に相続をしましょう

相続人全員で遺産分割協議書を作成する過程において、お互いを尊重して協議することで、多くの場合、相続人全員が納得して公平かつ円満に相続することが可能となります。

しかし、相続人間での意見が噛み合わなかったり、感情的な面で対立してしまうケースもあり、遺産分割協議書を作成することが困難なケースもあるのが実際です。

このような場合、相続人だけではうまく話し合いができず、相続手続きに入れないこともありますので、当事務所の弁護士にご相談ください。

弁護士は、多くの相続案件を解決してきており、問題解決の方法や落としどころを熟知しています。また、話し合いでは解決できない場合は、裁判所に調停を申し立てなければならないこともありますが、弁護士は、調停をうまく進める方法も熟知していますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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