離婚は、夫婦間だけの問題ではなく、子供の生活にも大きな影響を与えます。
親権、養育費、面会交流など、離婚に際して子供にする関連する問題は、子供の福祉・利益に十分配慮した判断・決定が求められます。
以下では、離婚に関連する子供の問題について、夫婦間で取り決めるべき事項や方法、内容などについて詳しく解説します。
親権
親権とは
親権とは、未成年(18歳未満)の子供を育てる親に法律上認められた権利や義務をいいます。
婚姻中は父母の両方が親権者ですが(共同親権といいます)、現在の日本の法律では、離婚後の共同親権は認められておらず(現在法務省で検討中)、父母のどちらか一方だけが親権を持ちます。
そのため、離婚に際して、父母の双方が子供と一緒に暮らしたいと主張して親権をめぐって激しい争いとなることがあります。
親権は、大きく分けて「身上監護権」と「財産管理権」の2つで構成されます。
① 身上監護権
身上監護権とは、子供と一緒に生活して、身の回りの世話、しつけや教育を行う「権利」のことです。一方で、子供が健全に成長するよう、衣食住の面倒をみて、必要なしつけや教育を行わなければならない「義務」という側面もあります。
従って、「子供と住みたい」という一心で親権を持つべきではなく、責任も伴うことを認識しなくてはなりません。
② 財産管理権
財産管理権とは、子供が所有する財産(主に預金など)を管理し、その財産にかかる法律行為を代理できる「権利」をいいます。一方で、未熟な子供のために、適切に財産を管理するという「義務」の側面もあり、どちらかといえば「義務」の要素が大きいといえます。
親権と監護権
上記のとおり、「親権」の1つに「身上監護権」が含まれています。この「身上監護権」が「監護権」と呼ばれるものです。つまり、「監護権」とは、親権のうち、子供と暮らして世話や教育をする親の権利義務のことをいいます。
「親権」に「監護権」が含まれるため、一般的には一方の親がその両方を持って子供の面倒をみます。その方が子供のためにもなるからです。
しかし、特別な事情があって、親権者が子供を監護できないような場合などは、例外的に一方が親権者、他方が監護権者となることがあります。
例えば、親権者を父親としたが、長期間の海外赴任が見込まれて日本で子供の面倒を見ることができないようなケースでは、母親を監護権者とすることもあります。
親権者を決める手続き
① 夫婦が協議して決める(協議離婚の場合)
夫婦が協議して離婚する場合で、未成年(18歳未満)の子供がいる場合は、どちらか一方を親権者に決めなければなりません。離婚届には親権者を記載する欄があり、どちらかを親権者として記載していない場合は、役所で離婚届が受理されず、離婚自体ができないのです。
従って、離婚に際して、親権者を決めることは絶対条件なのです。
なお、協議離婚の場合、夫婦で取り決めした事項を「離婚協議書」として作成し、できれば公証役場で「公正証書」として作成することをおすすめします。
「離婚協議書」の作成方法や、「公正証書」のメリットなどは、別ページ「離婚協議書の作成方法とメリット等」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
② 調停または裁判で決める(調停離婚・裁判離婚の場合)
夫婦の協議で親権が決められない場合は、離婚調停を申し立て、その手続きのなかで話し合って親権を決定します。
離婚調停でも親権者を決定できない場合、離婚裁判を提起して、その手続きのなかで親権者をどちらにするかを裁判所が決定します。
どちらが親権者としてふさわしいか
協議離婚や離婚調停では、夫婦が話し合って親権者を決定しますが、裁判までいった場合、裁判所が、どちらが親権者としてふさわしいかを両者の主張や証拠をもとに、子供の利益を重視して決定します。
その主な判断要素は、子供本人の意思(特に12歳以上の子であれば意見が尊重されます)、子供への愛情、離婚前の監護状況、離婚後の監護可否(親以外に面倒を見ることができる人が近くにいるかも含め)、子供の生活環境の変化の有無、通園・通学状況、双方の収入(養育費も考慮)、親の健康状態、生活・居住環境などです。
また、子供が乳幼児の場合は、授乳なども含めて母親が子供の面倒を見る比重が大きいことから、母親が親権者とされることが多いといえますが、常に母親が親権者になるとは限りません。
なお、離婚時に親権者を決めたとしても、その後に事情の変更があった場合、親権者を変更することも可能です。その場合は、家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てます。
養育費
養育費とは
養育費とは、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子供)が社会人として自立するまでに必要となる生活費、学費などの費用をいいます。離婚後に、未成熟子を引き取って養育する親が、他方の親に対して請求できるものです。
離婚しても親であることには変わりありませんので、親の責任として子供が自立するまでの費用を負担するのです。
養育費の取り決めと金額
養育費の金額や支払方法などは、まず夫婦で話し合って決めます。決められない場合は、裁判所での離婚調停や離婚裁判というステップを踏んで決定します。
養育費の支払は、長期間に及ぶこともあり、その間に支払が滞ることもあります。そのため、万一に備えて、夫婦間で取り決めをした場合は「公正証書」を作成し、支払がないときは給与の差押えなどの強制執行を行います。また、離婚調停や離婚裁判で取り決めた場合も、支払がない場合は強制執行が可能です。
養育費の金額は、夫婦の収入、子供の人数・年齢、実際の生活費の額などを総合して決めますが、それでも金額が決まらない場合は、裁判所のホームページ(下記URL参照)に掲載されている「養育費算定表」を活用するとよいでしょう。
【裁判所ホームページ・養育費算定表】
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
養育費の支払期間(いつから、いつまでか)、支払方法
養育費の支払期間は、原則として、養育費の請求をした時から、子供が18歳になるまでです。
ただし、夫婦間の協議や、調停または裁判で定められた期間があればそれに従います。例えば、子どもが20歳になるまで、大学卒業までと取り決めることもできます。
なお、養育費について取り決め後に、事情が変わった場合、例えば、18歳までと取決めをしたが大学に進学した場合などは、養育費の増額請求をすることができます。
養育費の支払方法は、分割払いが原則です。一般的には、1か月の金額を決めて、毎月一定の日に支払うことが多いです。
面会交流
面会交流とは
面会交流とは、離婚の際に、親権者とならず、子供を監護していない親(以下「非監護親」といいます)が子供と会うなどして交流することをいいます。
面会交流は、子供と離れて暮らす非監護親にとって、我が子と会って話しをする大切な機会ですから、できるだけ多く会いたいと考えます。一方で、監護親(子供と同居している親)としては、感情的な対立からできるだけ面会交流の機会を減らしたいと考え、両者の対立が激しいことが多々あります。
しかし、面会交流は、子供が非監護親と会うことを通じて、健全な成長を図るという子供の福祉の観点から行われるべきものであって、子供の権利でもあります。
従って、両親の考え方を優先するのではなく、子供の健全な成長や利益を第一に、冷静に話し合って決めるべきものといえます。
なお、家庭裁判所の運用としては、面会交流は特段の事情がない限り実施すべきという考え方に立っていると思われます。
面会交流の取り決め(方法・時期)・決めるべき内容
面会交流の可否やその内容は、まずは夫婦間の話し合いによって取り決めます。夫婦間での話し合いで決定できない場合は、調停・審判などの制度により裁判所が関与して決定します。
取り決めの時期について、親権は離婚に際して必ず決めないといけませんが、面会交流は離婚後に取り決めをしても構いません。ただ、離婚後に話し合いの機会を持つことは難しいケースも多いと考えられますので、離婚時にきちんと決めておくことが子供の利益にも適うと考えられます。
決めるべき内容は、次のような点ですが、曖昧な決め方をすると後でトラブルとなり、それは子供にも影響しますので、「細かく」「明確に」決めることが重要です
- 頻度(例:月に2回。第1・3土曜日など)
- 時間(例:午後1~3時)
- 場所(例:非監護親の自宅)
- 宿泊・旅行の可否と頻度(例:年1回非監護親の自宅への宿泊可)
- 電話・メールの可否(例:週1回は可。電話は10分まで)
- 学校行事への参加可否(例:運動会、保護者参観は可)
- 子どもの移動・受け渡し場所、方法(例:非監護親が監護親の最寄駅に迎えに行く)
- 面会交流時のルール(例:監護親の悪口を言わない、時間厳守)
- 子供が会いたくないと言った場合の対応(例:両親間で協議・調整)
など。
子供の姓と戸籍
「離婚すると、子供の姓と戸籍は、親権者となる方に変更されるのでしょうか?」とご質問を受けることがあります。
その答えは、「離婚が成立しても、子供の姓と戸籍は変更されません。」
例えば、婚姻期間中、母親が父親の姓を名乗り、離婚時に旧姓に戻る場合、母親が子供の親権者となっても、子供の姓は父親と同じ姓のままです。また、子供の戸籍も父親の戸籍に入ったままの状態です。
親権者が母親となった場合に、子供の姓を母親と同じものにして、かつ、母親の戸籍に入れたい場合は、子供の姓(氏)を変更する申立てを家庭裁判所に行う必要があります(通常はその許可が下ります)。
また、母親が離婚した後も父親の姓を名乗る場合も、母親の戸籍に子供を入れたいのであれば、子供の姓の変更の申立てを行う必要があります。
子供の扶養の変更
婚姻期間中、妻が夫に扶養されていた場合は、離婚に伴って扶養から外れます。
この場合、夫が勤務先から妻の「資格喪失証明書」を取得し、妻はその「資格喪失証明書」をもって、自身の勤務先で社会保険に加入するか、役所で国民健康保険・国民年金に加入します。
妻が子供の親権者となった場合であっても、子供を夫の扶養に入れたままにしておくことも可能ですが、一般的には、子供の扶養に関して夫とのやり取りをなるべくしなくて済むように、子供も夫の扶養から外して、妻の社会保険等に加入させることが多いです。
離婚と子どもの問題を円満に解決へ
以上、離婚する場合の子どもの問題について解説しました。
離婚に伴う子供の問題については、子どもの福祉・利益を第一に考えることが重要ですが、当事務所の弁護士の経験上、離婚を決意した夫婦が自己の利益を優先したり、冷静な判断・協議ができないことも多くあります。
離婚やそれに伴う条件は両親が決めることですが、子供は何も関与できず、保護されるべき立場にあります。
子供の将来を第一に考えた理性的な判断・決定が求められますので、離婚を決意された場合で、離婚条件をめぐり夫婦間での協議がうまくいかないような場合は、経験豊富な当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。