債権回収に関して、法人・個人のお客様から、次のようなご相談をいただきます。
〇 法人のお客様
- 「取引先に商品を納品したのに、その売買代金を支払ってくれない」
- 「工事を完了して引き渡したのに、その工事代金を支払ってくれない」
- 「会社でマンションを賃貸したが、家賃を滞納している賃借人がいて困っている」
- 「債権回収をしたいが、その方法が分からない」
- 「未回収の債権があるが、時効消滅してしまわないか心配」
〇 個人のお客様
- 「友人にお金を貸したが、なんだかんだと理由をつけて返済してくれない」
- 「離婚成立後、財産分与や養育費など合意書を作ったが、相手が支払わない」
- 「所有するマンションを賃貸したが、何度督促しても家賃を支払わない賃借人がいて困っている。家賃回収と退去を依頼したい」
債権回収が難しくなっている場合、多くのケースで相手が電話やメールを無視したり、督促通知を出しても無反応であったり、訪問しても居留守を使ったりと相手との交渉すらできず、いら立ってしまうことがあります。
また、「お金がない」というだけでなく、なんだかんだと理由やクレームをつけて支払いを拒むようなケースも多くあります。
以下では、債権回収を弁護士に依頼するメリットや、債権回収の方法やその流れ、弁護士に依頼した場合の費用などをご案内します。
債権回収とは(債権回収の方法と大まかな流れ)
「債権回収」とは、例えば、会社が取引先に商品を売った場合に、売主である債権者が、その債権(売買代金債権)を買主である債務者に支払ってもらうための活動をいいます。
その具体的な方法には、「交渉」と「訴訟(裁判)等の法的手段」の2つがあります。
「交渉」は、債務者と話し合って、任意に支払ってもらう方法です。具体的には、電話やメール、書面通知、面談などで支払を求めていきます。
「訴訟(裁判)等の法的手段」は、債務者が任意に支払わないような場合に、裁判所の力を借りて債権回収を行う方法です。具体的には、訴訟を提起して債務者に支払いを求め、判決を得るなどして債権を回収することが典型例です。訴訟中に債務者が任意に支払ったり、和解が成立したりして支払いが行われることもあります。
債務者が判決に従わない場合は、債務者の不動産、預貯金、給与等の財産を差押えて、強制執行によって債権を回収します。
弁護士に債権回収を依頼するメリット
上記のとおり、債権回収の具体的な方法には、「交渉」と「訴訟(裁判)等の法的手段」の2つがありますが、それぞれの場合で、弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
「交渉」の場合
メリット① 交渉のプロに安心して任せることができる
弁護士は、債権回収を含め、数多くの法的トラブルを解決してきた交渉のプロです。そのため、一般の方が債権回収を行う場合に比べて、より多くの債権を回収することが期待できますので、安心して交渉を任せることができます。
また、債権者が直接債務者と接触する必要がなくなりますので、精神的にも安心できるようになります。
メリット② 債務者にプレッシャーを与え、本気度を伝えることができる
多くの場合、弁護士が介入することで債務者はプレッシャーを感じ、「このまま支払いを拒み続けると裁判などされるのではないか」と感じます。
実際にも、債務者が支払を拒否し続けた場合、多くの弁護士は躊躇なく裁判などの法的手続きを選択し、より確実な債権回収を目指して行動します。そのため、債務者は、債権者が弁護士に依頼したことで本気度を感じ、「裁判になっては困る」と考えて支払いに応じることも少なくありません。
メリット③ 債務者の言い分を法的に論破できる
例えば、「工事が不完全であるから、納得できる仕上がりになるまで工事代金を支払わない」などとそれらしい理由を付けて支払いを拒むケースも多くあります。
このようなケースでは、債権者自身も「本当に工事が不完全なのか」どうかが判断できずに本来不要な工事に応じてしまったり、お互いの主張が平行線でいつまでも支払いが受けられなかったりすることもあります。
弁護士が介入した場合、上記の例でいえば、工事の請負契約書や関係法令を根拠として、「工事は完全に完了しているから、代金を支払え」などと法的な主張を行い、債務者の言い分を法的に論破できる場合があります。また、それでも債権者が納得しない場合は、工事代金の支払いを求める訴訟を提起するなどの法定手段を講じます。
このように、債務者の言い分を法的に封じることで、うまく債権回収を行うことができる場合も多くあります。
「訴訟(裁判)等の法的手段」の場合
メリット① 事案に適した方法を選択して債権を回収できる
債務者が任意に支払わない場合、典型例でいえば、債権者が訴訟(裁判)という法的手段を取り、支払いを求めていきます。訴訟を提起すること自体は、一般の方でも可能です。
ただ、訴訟手続きは複雑であり、裁判官を納得させるだけの証拠提出や法的な主張が必要となり、一般の方では難しい面があります。
また、法的な手段の選択についても、「その事案で訴訟提起が最善策か」などを検討する必要があります。具体的には下記で解説しますが、訴訟以外にも調停や支払督促など複数の法的手段があるため、「コストや時間も意識して、その事案に適した手段を選択すること」が重要であり、それができるのが弁護士なのです。
メリット② 法的手段を駆使して債権回収の実効性が高まる
訴訟で勝訴判決を得ても、裁判所は債権回収に協力してくれませんので、債権者が回収する必要があります。債権者の請求を無視していた債務者のような場合、判決が出ても支払わないことが多くあります。
この場合、弁護士は、訴訟提起前から債権回収を見越した戦略を立て、実行します。具体的には、弁護士は、債務者が財産を隠したり使い切ったりしないように判決前に「仮差押え」をしたり、判決後は、弁護士しか行えない独自の財産調査を行って預貯金等を特定して「差押え」などの「強制執行手続き」を取ることによって、債権回収の実効性をより高めることが可能です。
ですので、弁護士であれば、一般の方では難しい財産調査や、様々な法的手段を駆使して債権回収をより確実なものとすることができるのです。
当事務所での債権回収の方法と流れ
当事務所の弁護士が債権者からの依頼を受けて債権回収を行う場合、債権者のご意向(コストなど)、債権者と債務者との取引関係、債権額、これまでの督促の経過、債務者の言い分などを踏まえて最適な方法を選択しますが、当事務所の弁護士が行う一般的な債権回収の方法と流れは以下のとおりです。
債権者と債務者との取引関係、これまでの督促の経過などにもよりますが、弁護士に相談・依頼するまでに、債権者が債務者と電話などで交渉を重ねているケースが多いです。
ですので、当事務所では、債務者との交渉にはあまり時間をかけずに、弁護士名で内容証明郵便を送付して債務者に支払請求を行って、債務者の反応を見ます。
その際、任意に支払わない場合は訴訟等の法的手段を講じることも予め通知して、債権者が債務者にこれ以上猶予するつもりはなく、本気であることを示します。
債務者が内容証明郵便に何らかの反応を示した場合、その内容や態度等により、必要に応じて弁護士が交渉を行います。交渉を行うのは、債務者からの弁済が期待できる場合や、債権額が少額で訴訟などをした場合にコストの方が大きい場合、債権者が今後も債務者との取引関係の維持を望んでいる場合などです。
一方で、債務者が明確に支払を拒否しているような場合は、交渉しても時間の無駄ですので、交渉を経ずに訴訟などの法的手段をすみやかに選択します。
債務者が明確に支払を拒否している場合や、話し合いでの解決が難しい場合は、その事案に適した次のような法的手段を選択・実行します。いずれの場合も、手続終了後も債務者が支払わない場合に備えて「債務名義」(強制執行手続きが可能となる文書)を取得することを意識して行います。
通常訴訟
一般的には、債権額などの制約がない、「通常訴訟」を提起することが多いです。
下記の法的手段に比べて、きちんとした証拠提出による立証が必要となるなど、最も厳格かつ時間のかかる手続きですが、終局的に紛争を解決しやすいというメリットはあります。
少額訴訟
債権額が少額(60万円以下。金銭債権のみ)の場合は、簡易な手続きで、かつ原則1回の審理で即日完結する少額訴訟を選択することも、コスト面から有効です。但し、債務者が審理に応じず、通常訴訟への移行を求めた場合には、通常訴訟へ移行します。
支払督促
金銭債権などについて、債権者の申立てにより、その請求に理由があると認められた場合、裁判所から「支払督促」を債務者に送付してもらう手続です。証拠提出も不要であるなど、訴訟に比べてライトな手続きです。例えば、賃料の不払いなど、明確に債権が存在して双方に争いのないようなケースでは有効です。
債務者が2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、「支払督促」に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。但し、債務者が異議を申し立てた場合には、通常訴訟へ移行します。
民事調停
民事調停は、訴訟とは異なり、裁判官のもとで有識者(弁護士、税理士、会社役員など)から選任された調停委員(通常は2名)が両当事者から言い分を聴いて歩み寄りを促し、当事者が合意することで解決を目指す手続です。
例えば、債権者が今後も債務者との取引関係の維持を望んでいる場合や、裁判所を介した話し合いであれば解決できる見込みがある場合などに適しています。
但し、債務者がそもそも裁判所に出頭しない場合は、調停不調として手続きが終了しますので、債務者の出頭が望める場合に限ります。
債務者が財産を隠匿・消費してしまうおそれがあったり、判決などの手続き終了後も支払わないと考えられる場合などは、訴訟などと並行して、債務者の財産の仮差押えを検討します。仮差押えによって債務者の財産を一時的に凍結(ロック)させることができ、訴訟中などに債務者が財産を自由に処分できなくなり、債権保全が実現できます。
なお、債務者の財産調査は一般の方では難しいですが、弁護士であれば、弁護士会を通じて金融機関などに財産調査が可能ですので安心です。
債権者が勝訴判決などを得ても、債務者が任意に支払わない場合もあります。
そのような場合は、弁護士が債務者の財産調査を実施のうえ、債務者の財産を差押えます。例えば、債務者の預貯金・生命保険金、不動産、自動車などの動産等、債権額や債務者の財産などに応じて、最も効率的で確実な方法で差押えを実行します。
弁護士費用
債権回収に関する当事務所の弁護士費用の一例をご案内いたします。
以下の費用は、債権の存否や請求の可否自体に争いのない事案についての費用であり、これらに争いのある事件については、一般民事事件の費用となります(一般民事事件の費用は、こちらをご参照ください)。
ご相談料
初回のご相談に限り、1時間無料です(※1)。
なお、初回相談が1時間を超えた場合、又は2回目以降のご相談料は、次のとおりです。
法人のお客様※2 | 30分毎に11,000円(税込) |
※1 お電話・メールでの具体的なご相談はお受けしておりませんので、ご了承ください(基本的に対面でのご相談となります)
※2 個人のお客様は、30分毎に5,500円(税込)です。
着手金・報酬金
ご依頼内容 | 弁護士費用(税込) | |
着手金※1 | 報酬金 | |
交渉 (電話・メール・面談) |
55,000円 ※2 | いずれの場合も回収方法の如何にかかわらず、次の額 回収額×22% |
弁護士名の通知書の発送 (内容証明郵便等) |
55,000円 | |
支払督促 | 110,000円 | |
民事調停 | 110,000円 | |
少額訴訟 | 110,000円 | |
通常訴訟 | 220,000円 | |
仮差押え | 220,000円 | |
強制執行 | 110,000円 |
※1 着手金は、「ご依頼内容」ごとにそれぞれ費用が発生します。
※2 交渉は2時間までとし、2時間を超過する分につき、1時間22,000円が発生します。
日当
弁護士が交渉に赴いた場合、または調停・訴訟で出頭した場合、1回までは無料です(着手金に含まれています)。2回目からは、1回につき33,000円の費用が発生します。
実費
弁護士が交渉・調停・訴訟等で外出する場合の交通費、印紙・切手代、戸籍謄本・住民票・登記簿謄本などの取得費用等の実際に必要となった経費をご負担いただきます。
まとめ:債権回収のご相談は当事務所にお任せください
以上、債権回収を弁護士に依頼するメリットや、当事務所における債権回収の方法やその流れ、弁護士費用などをご案内しました。
債権回収は、法人や個人でも可能ではありますが、相手がのらりくらりと言い訳をしたり、財産を隠してしまうようなこともあります。また、一般の方では財産調査にも限界があるとともに、裁判所を介した手続きを行うことは困難です。
当事務所では、お悩みの事案に応じて、コストを意識した債権回収のプランをご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。